ひとはだの効能
 酔っていないように見えてそうでもなかったのか、乾杯のあと二人でコンビニのケーキを食べ、ワインのボトルを一本空けたところで、香澄さんは力尽きた。

 寝室のベッドは香澄さんに明け渡し、俺は一人、居間のソファで横になる。ボリュームを落として、映画のラストシーンを見守った。

 初恋が成就し、少女は男と家庭を築く。幸福に満ちたラストを香澄さんが目にしなくてよかった。最後まで観ていたら、香澄さんはまた、過去の自分を責めていたかもしれない。

 エンディングロールの途中でテレビを消して、胸元のブランケットを鼻先まで引き上げた。

目を閉じると、香澄さんが付けていた香水がほのかに香る。香澄さんの幸せを願いながら、俺は眠りに落ちた。

 五時間後、雨の気配で目が覚めた。

 カーテンを開けると、そぼ降る秋の雨の中、祖母が植えたホトトギスがしっとりと濡れている。

 気配を感じて振り向くと、いつの間に起きてきたのか、香澄さんが隣に立っていた。
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