ひとはだの効能
「綺麗なお庭ね」
「猫の額ほどしかないけどね」

 三坪ほどの庭は、草木や花が好きだった祖母が、丹精込めて作り上げたものだ。季節の移ろいを感じられる庭木が数本と山野草を中心にした素朴な庭は、子どもの頃から俺の遊び場でもあった。

「手入れも行き届いてるし、全体の色合いも綺麗。ずっと見ていられるわ」

 祖母の庭を、どうやら香澄さんも気に入ってくれたらしい。隣から、ほうとため息が漏れるのが聞こえた。

 庭に面したガラス戸を開ければ、小さな縁側がある。そこで朝食を摂るのもいいかもしれない。

「朝食用意するよ。庭を見ながら食べよう。香澄さんは先に洗面所使って」

 突然の思いつきに気を良くした俺は、いそいそとキッチンへ向かう。

 夕べコンビニで仕入れてきた食材と、かろうじて冷蔵庫に入っていた卵と牛乳でクロックムッシュを作る。専用のボウルに熱いカフェオレをたっぷりと注いで、縁側へと運んだ。
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