ひとはだの効能
 鋭い眼差しが俺を捕える。

「あいつは……莉乃は毎日ここに来てるんですか」
「いや、毎日ってわけじゃないよ」

 俺がそう答えると、葉月くんはほんの少し眉間のシワを解いた。

「毎日ってほどではないけど、三日にあげず来てくれるかな。この店のこと気に入ってくれてるらしくって」

 わざと煽るような言い方をすると、葉月くんはわかりやすく顔色を変える。思わず吹き出すと、彼はぎろりと俺を睨みつけた。

「注文決まった?」

 一瞬間が空いて、葉月くんはメニューに視線を落とす。一通り眺めると、彼はブレンドを注文した。

「お待たせしました」

 湯気を上げるコーヒーを無言で眺め、口に含む。テーブルの前から立ち去らずに様子をのぞいて観ると、葉月くんは「……うまい」と呟き視線を和らげた。
< 54 / 147 >

この作品をシェア

pagetop