ひとはだの効能
「コーヒー好きなの?」

 焙煎こそ専門の店に頼んでいるが、うちで出しているブレンドは、俺自身が厳選し、配合した豆を使っている。希少な豆を使っているし、店の規模に合わせて仕入れの量が少ないため原価が割高な分、他店より売価もやや高めだ。

それでも葉月くんは、前回も今日も迷うことなくブレンドを選んだ。

「親父の影響で、まあ」

 元々がそういう性格なのか、話題がコーヒーのことに移っても葉月くんは言葉少なだ。

「あちこちのカフェに行って好みのコーヒー探したり、自分で豆挽いて淹れてみたりもしてる?」
「……そうですね」

 カップを片手に上目遣いで俺を見る。訝し気な視線は「それがなんだ」とでも言いたげだ。

「そっかぁ。でもやっぱ好きな子とは共通の話題で盛り上がったり、自分の好きな物を一緒に楽しんで欲しいよね」

 そう言うと、飲みかけのコーヒーを喉に詰まらせた。
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