ひとはだの効能
「いただきます」と小さく呟き、香澄さんがコーヒーを口に運ぶ。

 好みの味だったらしく、「美味しい、この味好き!」と言って無邪気に笑って見せた。俺の心に、ポッと暖かな火が灯る。

「後で豆もあげるよ。ミルは持ってる?」

 もっと香澄さんの笑顔が見たい。ただそれだけだったのに、隣の香澄さんは予想に反して顔をしかめている。

「タダではもらわない。ちゃんとお金払う」
「えっ、お金なんていらないよ。香澄さんには世話になってるし、今日だって忙しい中わざわざ来てもらったのに」

 遠慮なんていらないのに、と思っていると、

「ただでさえお店が大変な時なのに、そういうわけにはいかないよ。……それに、遊馬くんは私に甘すぎるよ」

 そう言って、香澄さんは眉間のシワを更に深くした。
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