ひとはだの効能
「それじゃあ、点灯式だ」

 最後の照明を消し、ライトのスイッチをオンにする。

 暗くなった店内に、小さなライト達が温かなあかりを灯す。

 暗闇に浮かび上がったツリーを見て、香澄さんが息をのんだのがわかった。

「……泣きそうなくらい綺麗」

「そんな……」

 大げさな、と続けようとして言葉を失った。

 隣に立つ香澄さんが、瞳を潤ませている。

「……香澄さん?」

 びっくりして顔をのぞき込むと、香澄さんはメイクが崩れるのも構わず慌てて手の甲で両目を拭う。

「ダメだよこすっちゃ。……香澄さん、何かあった?」

 両手で顔を覆ったまま、香澄さんは何度も首を横に振った。
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