ひとはだの効能
 ……ひょっとして、元カレのことでも思い出した?

 三年も付き合ったんだ、クリスマスに何かしら思い出があっても不思議じゃない。


 でも、それにしても……。
 
 別れてからもう半年近く経っているはずなのに、香澄さんはまだそいつに気持ちが残っているのか。

 改めて思い知らされ、愕然とする。


 両手で顔を隠したまま、いつまでも俺に泣き顔を見せようとしない香澄さんに、諦めにも似た感情が身体を駆け抜ける。

 続けて俺を襲ったのは、言いようのない悲しみだった。


「……香澄さん」

 顔を覆う両手をゆっくりと外す。

「泣かないで」

 涙で濡れ、赤く染まった目蓋にそっと口づけた。
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