ひとはだの効能
「ごめんなさい! お怪我はありませんか?」

 寄り添って立つ二人に、莉乃ちゃんが駆け寄った。飼い主が現れて機嫌が直ったのか、アルは吠えるのを止め、尻尾を激しく振りながら莉乃ちゃんに近づいて来る。

「だ、大丈夫よ。ありがとう」

 また飛びつかれるとでも思ったのだろうか。香澄さんは菅井と呼んだ男の腕を掴んだまま、引きつった顔で一歩後ずさった。

「香澄さん、本当に? 転んでたでしょう。怪我はない?」
「ああ、遊馬くんまで……。騒がせてごめん、私なら平気だから」
「だったらいいけど……」

 さっと香澄さんの全身に目を走らせる。パンツスーツの裾が少し汚れているだけで、確かに目立った怪我はなさそうだ。

 よかった、と声を掛けようとして、香澄さんの隣に立つ男と目が合った。

 少し長めの、さらさらの黒髪の間からアーモンド型の目がのぞく。感じのいい笑みを浮かべ、俺に向かって軽く会釈をした。
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