ひとはだの効能
「私ね、つきあってた人がいるの」
「へえ」

　……なんだ、香澄さん彼氏持ちだったのか。

　まあ、そうだろうな。香澄さん綺麗だし、サバサバしてて話しやすいし、誰から見ても十分すぎるほど魅力的だ。

「社内の人なんだけど、もう三年くらいつきあってて」
「……そうなんだ」

　三年って、結構長くないか？　香澄さんくらいの年齢でそんなに長くつきあってれば当然……

「その人とこのまま結婚するんだろうなあって、まあ漠然とだけど思ってて」
「うん」

　香澄さんの話に頷きながら、何故か頭がぐわんと重くなる。

　……あれ、なんだこの感覚？　と自分自身に違和感を感じたところで、

「でもその人さ、他の子と結婚するって言うんだよね」

「……は？　っ、あちっ！！」

　香澄さんの話が予想外のところに着地して、驚いた俺は紅茶の入ったカップをひっくり返した。


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