ひとはだの効能
「そっか」

 香澄さんの手を取り、抱き寄せる。

 腕の中に閉じ込めて、艶やかな髪をそっと撫でた。

「頑張って、きちんとけじめつけてきて」

「遊馬くん……」

 コットンのシャツ越しに、香澄さんの吐息を感じた。たった一人でなんとかここまで踏ん張って来た彼女の身体から、ふわりと力が抜けていくのがわかる。

「全部終わったら、お疲れ様会しよう。イブはさすがに無理だろうから、香澄さんさえよければ、クリスマスの夜にでも」

「……いいの?」

 あともう少し近づけば、唇が触れてしまいそうなほど近い場所から、香澄さんが俺を見上げている。

「もちろん。Pregare特製のクリスマスディナーにご招待するよ」

「嬉しい!!」

 そう言って、香澄さんは俺の腕の中で瞳を輝かせる。


 ねえ、香澄さん。あなたはいったい誰のために、前の恋を終わらせようとしているの。

 今あなたの気持ちは、誰の方を向いているの。


 そう問いかける代わりに、俺は彼女に微笑んで見せた。

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