ひとはだの効能


 クリスマスイブの朝は、見事な晴天だった。

 開店作業の合間にふと店の外に目を向けると、国道134号の向こうに、朝日に煌めく凪いだ海と、澄んだ青空が見える。

 この青空になら、アーチを描く真っ白なブーケが映えるだろう。

 ……幸福の象徴である花嫁のウェディングドレスも。

 香澄さんは、いったいどんな気持ちでこの朝を迎えたんだろう。

 どんな想いで、式場へと向かうんだろう。

 彼女の心中を思うと、居ても立っても居られなくなる。

「しっかりしろ。落ち着け、俺」

 いつの間にか豆を全て挽き終え、空回った音を立てていたグラインダーのスイッチを慌ててオフにした。

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