亡国の王女と覇王の寵愛
「お前が行きたいと言うのならば、連れて行こう。俺が必ず守る。だから思っていることを話してくれ。俺も、もう何も隠さない。ふたりの間に壁を作りたくはない」
レスティアの主張を、ジグリットはきちんと受け止めてくれた。それが嬉しくて、まだ涙を零しながらレスティアは笑みを向ける。
「あなたを愛しているの。だから私が一番に案じるのはいつだってジグリットのことだし、それを、信じて欲しい。あなたと一緒なら、地獄に堕ちたって構わない。本当に心から、そう思っているの」
地獄という言葉を口にした途端、彼の顔が強張る。
レスティアは目を反らさず、ジグリットを見つめていた。
愛している。心から――。
力強くそう言い切ったレスティアの掌に唇を寄せて、ジグリットは淡く微笑む。
それはどこか儚げで、そんな笑みを見た途端、レスティアの胸には今まで経験したことのない感情が沸き起こる。
(私よりずっと強い、この人を守りたい。そんなことを思うなんて……)
「……俺は、父を殺さなければならないと決意したとき、覚悟を決めた。その罪によって地獄に堕ちるのならば、もう同じような悲しみを生み出さないために、他の国にもいる父のような存在を断とうと思った。だが、どんな理由であれ他国に軍を進めるのは侵略行為だ。それは理解している。俺も彼と同じ、咎人だ。ディアロスを責める資格などない」
「ああ、ジグリット……」
自嘲気味に笑うジグリットに、レスティアは震える手を伸ばす。
どうして彼が、いくつかの国に兵を進めたのか。ようやくその理由がわかった。ジグリットが侵略したのはグスリール王国のように、そのままでは崩壊してしまう国ばかりだったのだ。革命は、戦争よりも多くの血を流す。いろいろな歴史書を読んだレスティアには、それがよくわかった。
「だがグスリール王国だけは間に合わなかった。もう少し早く行動していればよかったと、いまでもそう思う。それでもお前は……」
「ええ。愛しているわ」
ジグリットの言葉を遮って、レスティアは微笑む。彼が不安に思うならば、何度でも告げるつもりだった。
手を伸ばして彼の頬に触れる。
ジグリットはそのレスティアの手に自らの手を重ねた。
「自分の人生は捨て、この国のために生きる覚悟を決めていたというのに。お前だけは、手に入れたかった。俺の運命に巻き込んでしまうかもしれないとわかっていたのに、手放すこともできなかった。……覚悟が足りなかった」
レスティアの主張を、ジグリットはきちんと受け止めてくれた。それが嬉しくて、まだ涙を零しながらレスティアは笑みを向ける。
「あなたを愛しているの。だから私が一番に案じるのはいつだってジグリットのことだし、それを、信じて欲しい。あなたと一緒なら、地獄に堕ちたって構わない。本当に心から、そう思っているの」
地獄という言葉を口にした途端、彼の顔が強張る。
レスティアは目を反らさず、ジグリットを見つめていた。
愛している。心から――。
力強くそう言い切ったレスティアの掌に唇を寄せて、ジグリットは淡く微笑む。
それはどこか儚げで、そんな笑みを見た途端、レスティアの胸には今まで経験したことのない感情が沸き起こる。
(私よりずっと強い、この人を守りたい。そんなことを思うなんて……)
「……俺は、父を殺さなければならないと決意したとき、覚悟を決めた。その罪によって地獄に堕ちるのならば、もう同じような悲しみを生み出さないために、他の国にもいる父のような存在を断とうと思った。だが、どんな理由であれ他国に軍を進めるのは侵略行為だ。それは理解している。俺も彼と同じ、咎人だ。ディアロスを責める資格などない」
「ああ、ジグリット……」
自嘲気味に笑うジグリットに、レスティアは震える手を伸ばす。
どうして彼が、いくつかの国に兵を進めたのか。ようやくその理由がわかった。ジグリットが侵略したのはグスリール王国のように、そのままでは崩壊してしまう国ばかりだったのだ。革命は、戦争よりも多くの血を流す。いろいろな歴史書を読んだレスティアには、それがよくわかった。
「だがグスリール王国だけは間に合わなかった。もう少し早く行動していればよかったと、いまでもそう思う。それでもお前は……」
「ええ。愛しているわ」
ジグリットの言葉を遮って、レスティアは微笑む。彼が不安に思うならば、何度でも告げるつもりだった。
手を伸ばして彼の頬に触れる。
ジグリットはそのレスティアの手に自らの手を重ねた。
「自分の人生は捨て、この国のために生きる覚悟を決めていたというのに。お前だけは、手に入れたかった。俺の運命に巻き込んでしまうかもしれないとわかっていたのに、手放すこともできなかった。……覚悟が足りなかった」