Memorys ‐過ぎ去りし時間‐
 「それは、お前が決めることじゃない。
 俺は"一条刹那"だから生徒会に入れるんだ」

 「何故私なのか理由をお聞かせ願いますか?」

 「お前は、自分の意志で動ける人材だ。
  ただ言うことを聞いて仕事をするだけではただの駒だ。
  自分の意見も言えない奴らなど要らない」

 「それでも他に適任者がいると思います」

中庭での会話がこんな状況に繋がってしまうだなんて思っても見なかった。
最悪だ。
周りの生徒みたいに目を輝かせれば彼に目を付けられなかったのだろうか…

 「いない。補佐はお前の仕事だ」

 「いい加減にしてくれませんか。生徒会に入れません」

入りたくないじゃない。
”入れない”だ。私なんかが入ったら迷惑を掛けるだけ。

 「…強情だな」

 「っ貴方に言われたくありません!」

 「入って良いことの方が多いと思うぞ。
  生徒会役員には特典がある。これはお前にとってもプラスになることだ」

入る気がないと言っているのに会長は無視をして言葉を続けた。

 「1つは授業を受けなくてもテストさえ合格点に達すれば授業に出なくてもいい。
  2つ目は学年末テストで上位5位以内に入れば学費の免除」

此処の学園は少々お金持ちの人たちが多く、学費が高い。
此処には親が進めて来たから入学しただけで、特別枠、優等生で入った訳でもない。

家は正直お金はあるが、あまり私の事でお金を使って欲しくない。

それに、出席率が足りずに留年なんてことにはならないってこと。
蓮花との約束は必ず果たせるだろう。


耳を傾けてはいけないと思うものの意志がぶれる。

周りの人にこれ以上迷惑を掛けたくない…

 「こんな良い条件を手放すのか?」

静かに挑発してくる会長。
それに乗るのは嫌だ…
だけど…

その内また学校には来れなくなるだろう。
ならば生徒会に入っていて損はない…

この先、彼らに迷惑を掛けるのが目に見えている。
しかし、彼らが私を引き込んだんだ。
その時は彼らのせいにしてしまえばいい…

ぐっと拳を握り決意する。

 「分かりました。その話お受けします」

私が途中でいなくなったとしても、誰かが私の代わりになっていくだろう。

私の答えを聞くと会長は満足そうに

 「当然だ」

そう言ったのだった。
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