結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
けれど、やっぱりそれはお互いのことをよく知って、愛というものを論理的に説明できるようになってからじゃないとダメだと思うのだ。

交わる男女を、さっきと変わらず指の間から難しい顔で眺めていると、私にぴたりと肩を寄せた姉が楽しげに言う。


「むしろ、お堅い綺代には肉食系な人が合うと思うわよ。社長さん、シート倒してくるような強引男子だったらいいのにな~」

「良くない」


被せ気味で一刀両断した私は、堪らずすっくと立ち上がり、買ったばかりの服を持って自室に向かう。

付き合う女性の理想も高そうなあの社長が、私相手に欲情するわけないじゃない。

どしどしと階段を上りながらそう考えていたとき、ふと彼が放ったひとことを思い出して足を止めた。


『今、無性にキスしたい』


……欲情、するわけない、よね。


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