結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
しかも、仕事が終わったばかりの彼は、この間と同じ洋光台駅で私を拾ったあと、ふうと息を吐きながらセットされていた髪をくしゃっと乱した。

その気だるげな仕草と、ラフになったヘアスタイルの破壊力ときたら。

漫画の中のヒーローさながらで、胸キュンをありがとうございます、と拝みたくなるほどだ。

イケメンはなにをやってもイケメンなんだよなぁ……と思いつつ、ちらりと社長に目を向けると、少し長めの前髪がかかる瞳もこちらを捉えている。

信号待ちの間、あまりにもじっと見つめているので、堪らず「なんですか?」と聞いてしまった。

普段より若く見える社長は、柔らかく瞳を細めてひとこと告げる。


「今日は一段と綺麗だなと思って」


……うわ、顔が熱くなってしまう。

定時の五時を迎えてすぐに退社した私は、一旦家に帰り、着替えとメイクをして社長の仕事が終わるのを待っていた。

咲子ちゃんに言われて、今日はコンタクトにしている。髪の毛も、紫乃ねえが緩く巻いてくれた。

これが精一杯自分の女子力を引き出した姿だから、褒めてもらえると素直に嬉しい。


「あ、りがとう、ございます……」

「俺のためにオシャレしてきてくれたんだと思うと嬉しいよ。キスもしやすいしな」

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