結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「では、これからバレンタインに向けての新商品開発会議を始めます」


課長の代わりにこの会議に出席している私は、澄ました顔で席についているものの、内心動揺していた。

なぜなら、誕生日席に泉堂社長がいらっしゃるから……。

時間が取れたときは社長も会議に参加することがあると、すっかり忘れていたのだ。これまで、私がいるときに彼が来たことはなかったから。

長方形のテーブルに向かい合って十二人が座る中、社長は誕生日席に座っているだけで、圧倒的な存在感を醸し出している。

窓側の真ん中辺りにいる私は、極力彼のほうを向かないようにして部長の話を聞いていた。


今回企画するのは、先ほど部長が言った通り、バレンタインに販売する新商品だ。定番のものに加え、毎年新たな商品を世に送り出している。

部長が「どんどんアイデアを出してください」と言い、集まったメンバーは各々考えてきた案を出し合う。

それについて和気あいあいと話し合っていたとき、ふいに社長が軽く手を挙げた。

気づいた皆が一旦話を中断して注目すると、意味深な笑みを浮かべる彼はあろうことかこんな発言をする。

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