結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「それならお安いご用です。私で良ければいくらでも」


快く答えたのだけれど、社長はなぜか表情を強張らせたままだ。そして、少し身体を前屈みにして私に近づき、声を潜める。


「もし、私が見ていないところでまた誘われたらどうします? ちゃんと断れますか?」


そう言われて、葛城さんの接待が終わったあと、二次会に誘われたことを思い出した。

確かに、もし葛城さんが本当に私のことを気に入ってくれているとすれば、また誘われることもあるかもしれない。

でも、あのときはただの気まぐれだっただろうし、今度会うのはこの本社なのだから、可能性は限りなく低い気がする。


「さすがに、会社でそんな話はしないんじゃないですかね」

「あの方は自己中な性格ですからわかりませんよ。欲しいものはなんとしてでも手に入れたがるかもしれない」


腕を組み、若干面倒そうな顔をする社長は、紳士の皮が剥がれかけているように見える。決して葛城さんのことを良く言ってはいないし。

葛城さんが、そうまでして私を欲しがるとは思えないけどな……と考えていると、ふいに社長が立ち上がり、私に一歩近づく。

そして、不思議に思って見上げる私を囲うように、テーブルと私が座る椅子の背もたれに手をかけられた。

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