結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
うわ、なに? 近いんですけど……! ていうか、こんなに接近しているところを見られたらマズイのでは!?

慌ててぐりんと首を捻り、辺りを見回すも、ミーティングルームの中にはすでに私たち以外いなくなっていた。

窓の向こうには離れたところにビルが見えるだけだし、誰にも目撃されなさそうでホッとする。

しかし、安心したのもつかの間、テーブルについていた手が私の顎に移動し、くいっと上を向かされたことで再び緊張が走る。

目の前には、月も出ていないのに完全に狼と化した彼の瞳があった。キスの記憶がまざまざと蘇り、心拍数が跳ね上がる。


「万が一、こんなふうに迫られたとして。お前お得意の理性は働きそうか?」


挑発するような、確認するような、少しの威圧感と色気を含んだ本性の声が投げかけられた。

ドキドキして、なにかが起こってほしいような謎の期待をしてしまって、正直理性は不安定に揺れている。

けれど、今目の前にいるのが社長ではなく、葛城さんだったとしたら……?

もう少しでキスができそうなくらい近づいた端正な顔を見つめ、なんとかそれを脳内で置き換えてみる。

この人は泉堂社長じゃなく、葛城さん。腹黒狼じゃなく、アンニュイなパティシエ……。

< 144 / 276 >

この作品をシェア

pagetop