結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
とりあえず真に受けずに、笑顔で軽く受け流しておくとしよう。


「あ、あはは、ありがとうございます。では、ご案内いたしますね」


工場へと続くドアを開けて中に入り、用意しておいた社長と葛城さん用の白衣や帽子などを手渡した。

私も帽子を被り、長い髪をその中に入れていると、葛城さんが社長に目を向けてこんなことを言い出す。


「泉堂さんまで付き添ってくださらなくても結構ですよ。倉橋さんさえいてくれれば」


後ろから両肩にぽんっと手を置かれて、反射的にビクッと身体が跳ねた。

やっぱり私とふたりになろうとしているみたいだけど、社長はどうするんだろうか。


「お気遣いいただいて、ありがとうございます。ですが、彼女にはできない説明もありますので」


和やかに返しつつも引く気配がない社長に、にこにこしていた葛城さんの表情が瞬時に仏頂面に変わる。


「……泉堂さんって、案外空気が読めない人だったりします?」


期待外れだとでも言うような、不満げな彼のひとことで、社長も私もピシッと固まった。

この人はまた失礼なことを堂々と……! というか、空気が読めないのはあなたのほうでは……と、きっと社長も思っているはず。

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