結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
それなのに、人がいいふたりはまだ残ろうとしてくれる。


「ここまで来たら最後まで手伝いますよ」

「僕にもできることがあれば」

「ありがとね。でも大丈夫よ。氷室くんは昨日も残業してたし、さっこちゃんはもうすぐ女子会の時間なんでしょ? 遠慮しないでほら、帰った帰った」


私はふたりの背中を押して、事務所のほうへと無理やり追いやった。

「本当に大丈夫ですか?」と心配してくれた咲子ちゃんだけれど、私が押し切ると申し訳なさそうな笑みを見せて帰っていった。

氷室くんも渋々といった感じで身支度を整え、他の皆も徐々に事務所をあとにしていく。ひとりデスクに座った私はパソコンに向かい始めた。

そうしてすぐ、デスクにコトリとなにかが置かれる。キーボードを打つ手を止めて目をやると、それはいい香りを立ち上らせるカフェオレが入ったマグカップだった。

驚いて隣を振り仰げば、黒いTシャツ姿が新鮮な氷室くんが立っている。


「え、淹れてくれたの? 氷室くんがこんなことしてくれるなんて珍しい」


というか、初めてじゃない?と思いながら正直な発言をすると、彼は見るともなしにカフェオレに目線を落としてぽつりとこぼす。

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