結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「……なぜでしょうね。この間から、倉橋さんを見ているとなにかしてあげたい気持ちになるんです」


“この間”というのは、氷室くんが葛城さんとの間に入ってくれたときのことだろうか。

確かに、彼が仕事以外で私に気を遣ってくれることは、これまでにあまりなかったから、あのときも驚いた。

しかし、どうしてそんなふうにしたくなるのか、氷室くん自身もわかっていないようだし、当然私にもわからない。

お互いに神妙な顔をして考え込んでいると、彼は我に返ったように動き出し、自分のデスクのほうに回りながら言う。


「あまり無理しないでください。最近、思い悩んでいるような顔をしてるときもありますし」


いつもの抑揚のない口調で放たれた声に、私は目を丸くする。葛城さんとのことで悩んでいても、表面には出していないつもりだったのに。


「そ、そう?」

「はい。話くらいは聞きますからね」


センスのいいリュックを片方の肩にかけた氷室くんは、最後にまた気遣ってくれるひとことを残し、事務所のドアのほうへ向かう。

彼の観察力はすごい。カフェオレを選んでくれたのも、きっと私がよく飲んでいるのを見て、好きなことを知っていたからだ。

じわじわと嬉しさが広がり、私は笑顔で「ありがとう!」と声を投げる。振り返った彼も、ほんの一瞬柔らかく微笑んでくれた。

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