結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
だからだろうか、この腕のぬくもりがとてつもなく心地いいのは。今求めていたものはまさにこれだ、と思うくらい。

しばらく目を閉じて、爽やかかつ甘い香りがほのかにする胸に身を委ねていた。そうして少しだけ落ち着きを取り戻すと、今度は急激に恥ずかしくなってくる。

あぁ、私……なんて醜態をさらしてしまっているんだろう。

私にとってはトラウマのようなものであっても、人にしてみればたかが雷。大の大人がこんなに取り乱すなんて、社長は呆れているに違いない。“よしよし”されるとか、完全に子供扱いされているし!

抱きついてしまったことを激しく後悔し、離れようとしたとき、こんなひとことが投げかけられる。


「よくひとりで頑張ってたな。もう俺がいるから大丈夫だ」


からかうでもなく、私の心情に寄り添ってくれる優しい声が、雷の音も雨の音も掻き消してくれるようだった。

離れたくなっていた気持ちは呆気なく萎んでしまい、このまま甘やかされていたくなる。

これじゃあ本当に子供だ、と自覚しつつもじっとしている私の耳元で、社長の甘い声が響く。


「だから、もう泣くなよ。泣き顔も可愛いが、あまり見たくはない」

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