結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
な、泣き顔も可愛い? それは一周回って嫌味だったりするのかしら。

彼の言葉を本気に取ることなどできずにいると、少し身体が離される。反射的に顔を上げたら、なぜか片手で眼鏡が外されてしまった。

一体なんなのかと困惑した直後、ぼんやりした視界でもわかるほど間近に彼の唇が迫ってきて、思わずぎゅっと目を閉じる。次の瞬間……。


「ひゃっ!?」


目尻のあたりに柔らかなものが触れる感覚に驚き、声を裏返らせてしまった。

間髪入れずに、反対の目尻にも唇が触れる。

なにがなんだかわからずどぎまぎしているうちに、今度はざらついた舌に頬を軽く舐められ、小さな悲鳴を上げるとともにビクッと肩が跳ねた。

ま、まさか社長、私の涙を舐め取ってくれているの!?


「やっ、ちょっと、涙を拭ってくれるなら手で……!」

「眼鏡と、お前を抱くので塞がってる」


胸を押して制するものの、平然とした彼はまったく意に介していないし、私の背中に回した手も離そうとしない。

そうして再び顔が近づき、唇の端にまでぺろりと舌が這わせられる。

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