結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
社長は、私を嫌っているということはないはず。嫌いな相手にキスなんてしないだろうから。

だからと言って、好きだというわけでもないと思う。本能を大事にしている人だもの、きっと気まぐれでキスをすることもあるに違いない。

万が一好意を寄せてくれているとしても、忘れられない人を重ね合わせているせいかもしれない。

私の想いが実るかどうかもわからず、サンセリールは貴重なチャンスを失う。理性的に考えれば、どちらがいいかは明白だ。

それなのに、社長への恋心を手放すことをこんなにもためらってしまうなんて……。


『倉橋さんは頭がいい人だから、きっと正しいほうを選んでくれるって信じてるよ』


優しい口調に戻ったものの、どこか威圧感が混じる声が聞こえてはっとした。『じゃあ、また連絡するね』と続けられ、慌てて口を開く。


「葛城さ──」


呼んだときには通話は終了させられてしまい、私は大きなため息を吐き出してスマホを耳から離した。

気がつけば雨はしとしとと降っていて、ディスプレイにたくさんの雫が落ちていく。髪や服もしっとりと濡れているのに動けない。

一体どうしたらいいんだろう。こんな選択肢、意地悪にも程があるでしょ……。

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