結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
効率良く、合理的に恋人を作りたいと思っていたけれど、そんなことできるわけなかったんだ。

面倒臭くて、頭と心が別に動いて。傷ついてもいいと思えるほど、ある意味異常な感情が恋というものなのだから。

なにも解決はしていないけれど、恋に落ちている自分を客観的に捉えられたことで、少し胸がスッとした。


「だから、倉橋さんには本当に好きな人と幸せになってもらいたいと思ってます」


こちらを向いた氷室くんは、迷いのないしっかりとした口調で応援してくれる。

自分の気持ちをよそに私の幸せを願ってくれる彼に、私はじんとしながら「ありがとう」とお礼を言った。

咲子ちゃんも優しく微笑み、ちょっぴりセンチメンタルになった空気を明るくするように茶化す。


「氷室くん、なんか人間らしくなったねぇ」

「もともと人間です」


間髪入れずツッコミを入れるいつもの彼に笑っているうちに、気分は少しずつ晴れてきていた。

誰かのために自分の気持ちを封印する。それも、恋愛のひとつのカタチだ──。


< 197 / 276 >

この作品をシェア

pagetop