結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
昼食を終え、公園から戻ってきて本社のエントランスに入ると、綾瀬さんと話しながらこちらに歩いてくる社長と出くわした。
モデルのようなスーツ姿、ナチュラルにセットされた緩くうねる髪、真剣な表情。
そのすべてはずっと見ていても飽きないのだけど、今しがた彼のことを話していたばかりで恥ずかしさと気まずさが入り混じり、目を逸らしてしまう。
これからのスケジュールを確認するふたりの声が私の横を通り過ぎていくとき、視線を合わさずに軽く頭を下げた。
数か月前まではいつもこんな感じだったなと、ふと思う。本来なら、一研究員でしかない私が社長に近づくことなどできなかった。
彼と話せて、名前を呼んでもらえて、恋を教えてもらえたことだけで十分だ。それ以上を望むなんて、贅沢にもほどがある。
そんなふうに思いながら午後の仕事も乗り切って帰途につき、少々怠い身体でベッドに寝転がると、いつの間にか意識を飛ばしていた。
一階からかすかに話し声が聞こえてうっすら目を開いたとき、日が暮れ始めて部屋は薄暗くなっていた。
おそらく一時間も眠っていないはずだが、少し身体が軽くなった気がする。
今日はお母さんがいるから夕飯の準備は任せることにして、あと数分だらだらしていよう……と再び瞼を閉じた、次の瞬間。