結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「氷室くん……ごま豆腐あげる」


なんとなく氷室くんに感謝したくなり、ランチが運ばれてきた直後、小鉢に入ったそれを差し出すと、彼は「どうも」と言って受け取った。

氷室くんは、豆腐やプリンみたいな柔らかくて凝固性があるものが好きらしいのだ。老人か、とつっこみたくなる。

ほっこりした気持ちでランチを食べ始めて数分、なにかを思いついたらしい咲子ちゃんが、少しいたずらっぽい笑みを浮かべて言う。


「じゃあ、綺代さんにもっと夢中になってもらうために、媚薬チョコの被験者は社長にお願いするってのはどうですか? もちろん食べさせるのは綺代さんで」


社長を被験者に?

そうか、チョコレートを試食したら媚薬効果が表れるのかもしれないのだから、誰にでも試せるわけじゃない。でも、社長だったら…………

よくないから!!


「そんなことさせられるわけないじゃない! ていうか、媚薬チョコを作ってるってことをまず知られたくないし」


思わず箸を握りしめて声を荒げてしまった。

だって、そんなヤバいもの研究してないで真面目に仕事しろ!と思われそうだ。絶対に知られるわけにいかない。

険しい顔をする私に対し、咲子ちゃんは余裕な様子で打開案を提示してくる。

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