彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)


「桃華ちゃん、来てくれてありがとう」


主任の席のちょうど横に立って、前回同様甘さ全開の微笑で話しかけてくる朔也さん。
それとは対照的に不機嫌な様子の主任。

朔也さんの登場で、周りの人朔也さんのことチラチラ見てますけど?
なんか華やかなオーラがあるからかもしれないけど。

まぁそれはそうと、お礼はちゃんとしないとね。
朔也さんが誘ってくれたから、今日ここでこんなにおいしい料理が食べられたんだから。


「とてもおいしかったです」

「それはよかった。ワインもお気に召していただけたカナ?」


バチッとウインクひとつして続ける朔也さん。
だから、そういうのって他でやってくださいって。

主任のお友達に熱上げるなんて事になったら大変ですから。
そのぐらいイケメンシェフのウインクは強烈で。
毒牙にかかりたくない一心で、その笑顔を頭の中から追い出そうとするけど。


「これはちょっと俺には甘いけどな」


その甘い世界を壊したのはやっぱり主任の一言で、


「何言ってんの。“桃華ちゃんのために”選んだんだから。お前の好みなんて…」
「天ヶ瀬さんは飲めないらしいけどな」


朔也さんの言葉をさえぎるように言う主任も。
さっき知ったと思うんですけどね?その情報。


「そうなんだ。ごめんねぇ?無理させちゃった?」


それを聞いた朔也さんは、今度は申し訳なさそうに眉をさげて言うから、


「あの、いえ。食事の前のもこのワインもおいしかったです」

「え?どっちもお酒だけど、大丈夫?」


ワインがお酒だって言うのはわかる。
でも食事の前に出た甘い飲み物もお酒、なの?


「あれは食前酒です」


ちょっとため息つき気味に主任が言うから


「おばあちゃんの梅酒みたいだなーって思って。結構飲んじゃいました」


うん、だっておいしかったし?
お酒と知ってたら飲まなかったけど、もう飲んじゃったしね。
あ、でも倒れたりしてないから。


「おいしかったならいいですけど、具合悪くなったりしたら言ってください」

「おまえさ。仕事中じゃないのになんでそのしゃべりなわけ?」

「あ?」


主任、その顔怖いです。
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