ハライメ〜悪喰の大蛇〜
あざみのお母さんもその頃はまだ矢鳥のうちにいたはずだけど、その人じゃなかった。
もっと若くて……大人って感じじゃなくて、高校生とか大学生とか、それくらいの雰囲気に見えたの。
『お姉さんだれ?』って私が聞くと、その人は『私はここのうちのお姉さんよ』って優しく笑って答えた。
『あざみちゃんとヒナちゃんのお姉さん?』
『ううん、あざみちゃんから見たら叔母さんよ。日菜子からしたら、お母さん』
私、その人の言ってる意味がよくわからなかったの。
高校生くらいのその人と、「お母さん」や「おばさん」て言葉が全然つながらなかったのね。
『上がっていく?』
女の人はにこにこしながら私に手を差し出してきた。
優しい笑顔だったのに、私、混乱してたせいで怖くなっちゃって。
そのまま走って逃げちゃったの。ビワを渡すのも忘れてね。
その人のことは、家族には話さなかった。
話したら叱られるような気がしたから……」