ハライメ〜悪喰の大蛇〜
加代が話し終えて、私たちの間に沈黙が落ちた。
しばらくの間の後、私は口を開いた。
「……でも、その人が本当にヒナのお母さんかどうか、わからないじゃない」
「そうね。でも、年齢的には一致してる。ヒナちゃんのお母さんは、10代でヒナちゃんを産んだんでしょ?
それに、これはけっこう後になってから気づいたんだけど、あの人、ヒナちゃんにそっくりだった。笑った時の優しい目元なんか、とくに……」
言いながら、加代は私の動揺に気付いたようだった。
あわてて自分の言葉を打ち消すように手を振ってみせる。
「ううん、私のカン違いかもね。子供の記憶なんてアテにならないし」
忘れてね、と加代が笑う。
だけど、私は笑えなかった。
『離れの縁側で幼い日菜子を抱く、高校生くらいの女の人』
その言葉が、記憶の底から何かを浮かび上がらせようとする。
「私も、その人を知ってる気がする……」
「え……じゃあ、やっぱり」
「わかんない、何も思い出せないけど、『知ってる』気がするの……」