ハライメ〜悪喰の大蛇〜

明式神社の氏子の家に生まれた女の子は、16歳になると「ハライノギ」という儀式を行う慣わしになっていた。


ハライノギを行う少女は「ハライメ」と呼ばれ、矢鳥家の離れ―――「儀式の間」に丸一日閉じこもり、
鈴を鳴らすことで自分の身体から罪を絞り出す。


そうして身体から出た罪を悪食の大蛇「アケジキ様」に食べてもらう事で、今後の人生に罪や穢れ、苦難が振りかからないように祈る、という行事だ。


そしてハライノギには、15年から20年に一度、ハライメが七日七晩儀式の間に篭もり続ける儀式を行う年があり、
その年のことを「本年」と呼んだ。


「本年」にハライメをつとめるのは、氏子総代である矢鳥家の娘と決まっていた。

娘が16になるのに合わせて行われるため、はっきりと何年置き、とは定められていないのだ。



今年は、その「本年」のハライノギが行われることになっていた。

ハライメをつとめるのは、二ヶ月ほど前に16歳になったばかりの日菜子だ。

明日から七日七晩、一人で儀式の間に篭もらなければならない。

七日も篭って、中ですることといえば気まぐれに鈴を鳴らすだけ。

想像しただけでも退屈すぎてうんざりする。

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