ハライメ〜悪喰の大蛇〜

逆に去年亡くなった祖母はすごく信心深い人で、私たちを褒める時も叱る時も、すべてにおいて蛇神の逸話を絡めて話すようなおばあちゃんだった。

この人に育てられたせいで、私も小学校に上がる頃までは
「二匹の大蛇が階段で追いかけっこをしてる」
なんて妄想をして泣いていたらしいけど……そんなの昔の話だ。


今の私は大蛇なんて信じていない。

そんなことより、時代錯誤で退屈な儀式に一人で臨まなければならない日菜子のことが心配だった。


ねえ、あざみちゃん、と日菜子がどこか思いつめた表情で私を見た。

「加代ちゃんがウブモリをするって言ってくれたのは……私が不安そうな顔してたからだよね。迷惑かけちゃった。情けないなあ……」

「ヒナ……」

私は何と言えばいいかわからずに困った。

日菜子自身が言う通り、加代がウブモリをしたいと言い出した理由は、日菜子が心配だったからにちがいない。

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