ハライメ〜悪喰の大蛇〜

伊丹家は明式神社の氏子の家だ。

うちから三軒向こうにあって、そこの娘で私より三つ年上の加代は私と日菜子の幼なじみであり、姉のような存在だった。

この春から大学に進学して家を離れていたのだけれど、
大学の夏休みで帰省していたところに、日菜子をハライメとしてハライノギ本年を行うことを知ったのだ。


『私もあざみと一緒にウブモリをやる。お姉さんが二人いた方がヒナちゃんも心強いでしょ。
ウブモリはもともと二人一組なんだから構わないでしょう?』


けれど、私ひとりでウブモリをするとすでに決まった後から「自分も」と手を上げたことが、
良く言えば規律に厳しい、悪く言えば頭のかたい彼女のおじいさんの逆鱗に触れてしまった。

結果、一週間にも渡る大げんか。

加代本人は「絶対私が勝つからね」と笑っていたけれど、見ているこっちは申し訳なくて萎縮しまくりだった。


でも、私には加代の気持ちがわかる。

加代は日菜子が不安そうだからそばにいようとしたわけじゃない。

日菜子が決然としていたから、その決意を支えるためにそばにいてあげたいと思ったのだ、きっと。

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