君を愛していいのは俺だけ

 駅まで歩く間、桃子ちゃんは元木さんと腕を組んで歩いていて、私と滝澤さんの前を行く。


「ねぇ、秋吉さん」
「なんですか?」

 隣を歩く滝澤さんを見上げると、トレードマークの黒縁眼鏡の奥からまっすぐ見下ろされた。


「楽しかったんでしょ? 出張」
「普通ですよ」
「でも、歓迎会の後よりも今の方が、明らかに社長のことを意識してるように見えるよ」
「…………」

 滝澤さんに見透かされて口ごもってしまった。否定しても、きっと追い打ちをかけられそうだ。


「仁香ちゃーん、もう一件行く?」

 私はなにも応えず、呼びかけてきた桃子ちゃんの元へ駆け寄った。


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