君を愛していいのは俺だけ

「報告書に不備がありましたか?」
「違うよ。話したいって連絡もらってたから」
「えっ、そのために!?」

 忙しいはずなのに、時間を作ってくれた彼の優しさが嬉しい。
 彼は社員とのコミュニケーションを大切にする人だから、社長として時間を割いただけとしても、気にかけてくれていたことに違いない。


「仕事中にする話ではないのですが、いいですか?」
「いいよ」
「社長、今は好きな人いるんですか?」
「……いるよ。なんでそんなこと聞くの?」

 微笑みながら問いかけられても、言葉に詰まる。
 彼のことが好きだからって言えたらいいのに……振られたくなくて。


「なんとなく、聞きたかったんです」
「そう」
「あと、連絡先を教えてもらえますか?」
「いいよ。他の人に言わないなら、特別に教えてあげる」
「言いません! 約束します!」

 私がすかさず答えると、彼はパンツのポケットに入れていた携帯を取り出して、連絡先を交換してくれた。


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