君を愛していいのは俺だけ
「どの商品でも、それに入るの?」
「限られてきますね。でも、アパレルがデザインをしやすいのはこういうものかもしれません」
「なるほどなぁ」
女子のことはさっぱり分からないとでも言いたそうに、私が手にした口紅も一緒に眺めている。
「広報で、CMも流そうって話になってるんだよ。ちょっと色気のある感じの」
「色気……ですか」
「ただ、期間限定で企画やってますって言っても、埋もれるだけだからね」
おもむろに口紅を繰り出した彼は、手の甲に軽く塗って色味を確認しているようだ。
「仁香」
「っ!?」
突然、名前を呼ばれて動揺した私に、ほんの少し熱を感じる瞳を向けてきた彼がじっと見つめてくる。
「ひとつお願いがあるんだけど」
「な、なんでしょうか?」
座り直して、さらに近くなった距離に鼓動が急く。
ぐらぐらと沸騰するような緊張で、頬が染まっていくのが分かった。