君を愛していいのは俺だけ
「ちょっと動かないでね」
「っ!!」
彼が伸ばした手で顎先をとらえられ、真っ直ぐ見つめてくる瞳に視線まで奪われていく。
「あぁ、こういう色なのか……」
そして、持っていた口紅をそっと塗ってくる彼が私の唇を見つめてくるから、もっとドキドキして――。
「かわいいね、この色。俺は結構好きだな」
「そ、そうですか?」
「うん。仁香に似合ってると思う」
解放されて、手鏡に自分を映す。
薄く塗られた口紅は上品なローズピンクのシアーな質感のもの。艶を帯びた自分の唇を見るのも、真っ赤になった自分の顔を見るのも恥ずかしくなった。
「いいかもね、自分のものだって目印になるのは」
緩やかに微笑む彼がそんなことを言うから、期待しちゃいけないと思うのに、期待したくなる。