君を愛していいのは俺だけ
「それは違うよ。仁香のお父さんが怒るのは当然のこと。それでも、想いを貫いて仁香との恋を守り抜けなかった俺が弱かったんだ」
「…………」
「だから、俺が悪い。仁香も悲しませて、自分の首も絞めるようなことをして。今、この歳になれば分かるけど、きっとあの時、仁香のお父さんは俺を試してくれていたのかもしれないと思うし」
七年も経って、ようやく別れ話をするようになるなんて思わなかったな。
あの時、陽太くんは私を好きじゃなくなったんだろうって考えていたけれど……。
「社長は、あの時、私に恋をしてくれていたんですか?」
「大好きだったよ。別れてからもしばらく切なかった。そんなんだったら会いに行けばよかったんだろうけどね」
泣いてしまいそうになるのをこらえるために、ワイングラスを傾けてごまかす。
大好きでいてくれたんだ……。
それを知れただけでもいい。
ちゃんと失恋できずにいたから、やっと心が救われたような気がする。