君を愛していいのは俺だけ

「嫌なら帰ったっていいし……仁香が決めて。俺は、家に行きたい」
「わ、私が決めるの?」
「今帰るか、俺の家で暖を取ってから帰るかの二択」

 離してしまった手は二度と繋がれることはないようで、彼のポケットに隠された。


 彼がデートだと言ってくれたのも、手を繋いでくれたのも……自宅に呼ぶため?
 “お持ち帰り”されそうになってるのかな……でも、彼はそんな人ではないはずで。
 少なくとも私と彼の間には、社長と社員の関係があるから、おかしなことは間違っても起きてはならないし……。


「仁香、男の家に入ったことある?」
「…………」

 不意に聞かれて口ごもる。
 彼と別れてから、他の誰とも交際してこなかったし、誰にも気持ちがなびかなかったなんて言えない。

 でも……。


「陽太くんの家に行きたい」

 今の彼を知るには、勇気を出すのも必要なのは分かっていたこと。
 悪い予想は当たらないと信じて、踵を返して先を行く彼の背に続いた。


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