君を愛していいのは俺だけ

 緊張しながら歩くこと五分ほど。
 彼にどう思われただろうと不安になる。
 自分から家に行くと選んだから、今さら後にも引けないけれど……。

 曲線でデザインされたタワーマンションがそびえ立ち、彼は慣れた様子で芝生が敷かれた前庭を横目に足を進める。


「ここに住んでるんですか?」
「そうだよ」

 三十階ほどありそうな高さを見上げると、緩やかな曲線の外観がとても美しく、音もなく開いたドアからホールに入った。


「2810の周防です」
「おかえりなさいませ。お預かりしましたクリーニングが出来上がっておりますが、お渡しはいつになさいますか?」
「今もらっていきます」
「かしこまりました。すぐ準備いたしますので、お待ちくださいませ」

 ワイシャツやスーツのクリーニングを受け取った彼は、コンシェルジュカウンターを後にして、奥にあるエレベーターホールへと向かった。


< 178 / 431 >

この作品をシェア

pagetop