君を愛していいのは俺だけ
「仕事の話は、これで終わり」
「えっ?」
「デートだって言っただろ?」
不意に微笑まれて、胸の奥が大きく跳ねる。
ひとり分の距離は意外と近くて、彼が動くたびに一層意識させられて緊張が増す。
本当に彼の部屋にいるんだと思えば思うほど、どんなことが起きるのか予想できなくて……。
「仁香は、俺のことを知りたいって思ってないの?」
「思うけど……なにから話したらいいのかな」
空白の七年のせいで、今の彼が近いようで遠い。
どんなことを話そうとか、私を知ってもらうにはどうしたらいいかなとか、考えてみるけれど答えは出ないままだ。
「なんでもいいよ。答えられないようなことは、多分ないと思うし」
紅茶を飲んでから、リモコンで煌々と光っていた照明を少し落とした彼は、私が口を開くのを待っているようだ。