君を愛していいのは俺だけ

 ランチから戻る間、偶然外出する陽太くんとすれ違った。
 佐久間さんや他の社員も一緒で、みんなでランチにでも行くのだろうと、道路の反対側から見送る。


「そんなに見てると、好きだって言ってるみたい」
「えっ!?」
「仁香ちゃんは、目に気持ちが出てるんだよ。社長を見てる時だけ、視線がハート形になってるような感じなの」
「漫画みたいなこと言うね」
「だって、そうなんだもん。滝澤さんも言ってたよ」

 そこまで言われたら、否定もしきれなくなる。
 自分がどんな視線を送っているかなんて、見えるわけでもないし……。


 だけど、彼の姿をこうして見かけるだけで、胸の奥も頬も熱くなる。
 生きるために動き続けている鼓動が、恋のために跳ねて、色々な出来事を思い出させる。


 再会した日も、彼が陽太くんと分かった時も、彼がデートしてくれた日のすべても。


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