君を愛していいのは俺だけ
社を出て、バッグにIDをしまいつつ携帯を出す。
陽太くんとのメッセージ画面を表示させ、【お疲れ様です。今日はどこで集まるのか、ご存知ですか?】と何気なく送信してみた。
冬空の下でいつまでも返信を待てず、出たばかりのビル内へ戻った。
他社の社員も足早に帰宅していくのを横目に、ロビーに置かれたソファに座って、彼からの返事を待つ。
だけど、五分経っても、十分経っても既読が付かない。
不安になった私は、一度自席に戻って佐久間さんにメールをしてみようと腰を上げた。
「あれ? 秋吉さん」
「っ!! ……お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
きょとんとしている陽太くんが、帰宅する様子でやってきていて、偶然の出来事に言葉が詰まった。
「今日、行くんだよね?」
「はい。でも……場所がわからなくて」
「佐久間に聞かなかったの?」
「はい……」
まさか、陽太くんと話すきっかけをつくるために、自ら仕向けたとは言えない。
だけど彼は携帯を取り出し、私が送ったばかりのメッセージを目の前で確認し始めた。