君を愛していいのは俺だけ

「ところで、なんで誰にも場所を聞かなかったの? 佐久間に話しかけにくいわけでもないだろ?」
「あ……えっと、そうなんですけど……仕事をしてる間に忘れてました」

 タブレットを操作しながら、問いかけられて戸惑う。
 彼は画面を見てくれていて助かったと思いつつ、変に思われない返事をしたつもりだけど、少しの沈黙でさえドキドキしてしまった。


「まぁ、セール担当でMDともなると、多忙だよね」
「お手数おかけしてすみません……」

 陽太くんも、まさか私を拾ってお店まで行くなんて思っていなかっただろうな。
 申し訳なく思って、彼の様子を窺うために視線を向けると、まっすぐな瞳が返された。


「俺は、今日が早く来ないかなって楽しみにしてたけどね」
「わ、私も楽しみにはしてましたよ?」
「本当に? 俺は、仁香とまた話せるって思ってたから、仕事も頑張ったし、今日も朝から楽しみで仕方なかったんだけど」
「っ!!」

 思いがけない彼の言葉に、勝手に頬が染まっていく。



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