君を愛していいのは俺だけ

 彼の部屋に入ったら、鼓動の音はさらに高鳴った。
 じきに佐久間さんたちがやってくるとわかっていても、ふたりきりで彼の部屋にいるのは慣れるはずもなく、玄関で靴も脱がずに立ち尽くす。


 緊張している私をよそに、彼はリビングとは反対へ廊下を進み、ドアの向こうに行ってしまった。
 それにしても、一体どれほどの広さなんだろう。リビングダイニングだけでも五十畳はありそうだったし……。


「仁香、手伝ってほしいんだけど、リビングに運んでくれる?」

 彼を待っていたら、ハンガーラックを引いて戻ってきた。
 大量のハンガーも用意されていて、ついでに自分のコートも掛けさせてもらう。

 それから、教えてもらったキッチンの引き出しから人数分の箸やフォークを出して、彼が用意したグラスに入れた。


「あとはケータリングが届くのと、佐久間たちが来るのを待つだけだから。手伝ってくれてありがとう」
「っ……いえ、これくらいは」

 ふうっとひと息ついていると、彼は不意に私の髪を撫でて、リビングのソファに座った。


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