君を愛していいのは俺だけ

 今度は玄関のインターホンが鳴って、彼が財布を手にリビングを出ていき、配達員と話している声が少し聞こえてくる。

 この七年間、彼の日常も知らなかったから、ささいな出来事や彼の仕草と言動が、逐一記憶に刷り込まれていくようだ。


 デザート以外のケータリングが届き、五分ほどしてから佐久間さんたちがやってきた。
 さっきまでふたりきりだったリビングに、総勢二十人が一堂に会し、すぐににぎやかになっていく。


「秋吉さん、社長の家の場所知ってたの?」
「会社の下で社長と偶然会ったので、先にお邪魔してたんです」
「あぁ、そうなんだ」

 佐久間さんに聞かれて、陽太くんに言われていたのと近しい答えを返し、ホッと息をつく。
 事実を話しただけなのに、彼と少しでも多くいられて嬉しかった気持ちのせいで、ちょっと気まずさを感じた。


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