君を愛していいのは俺だけ
「気付いてやれなくてごめん。楽しんでほしくて来てもらったのに」
「本当に、大丈夫ですから。自分からあっちに行っただけなので」
「誰とも話さないでいたって楽しくないでしょ? 江藤と話したかったなら、席変わるけど」
私が陽太くんと話したいと思っているのを知ってか知らずか、簡単に彼がそんなことを言うから、私はグラスを傾けてシャンパンに口をつけた。
「あまり大きな声では言えないけど、社長室のみんなと話すより、今夜は秋吉さんともっと話したくて誘ったんだよ。だからさ……」
半端に言葉を区切った彼は、周りの目を気にすることなくじっと見つめてきた。
ドキドキする自分の鼓動の音と、まっすぐで力強い彼の瞳に意識が囚われていく。
口角を上げて微笑んでいた彼の表情に真剣さが混じり、一層私の鼓動が速度を増した。
「俺の隣から離れるな」
私だけに聞こえるように呟かれ、胸の奥がキュンとして切なくなった。