君を愛していいのは俺だけ

「分かった?」
「……はい」

 突然のことに驚いて返事もできずにいたら、彼が強制的に答えを求めてきて。
 頷きながら言った私に、彼はやわらかな微笑みを向けてから、反対隣の佐久間さんに話しかけた。


「秋吉さん、異動の話はどうですか?」
「あぁ、そのことなら先に話したよ」

 佐久間さんに問いかけられて答えようとすると、すかさず陽太くんが間に入った。


「まだ考えてくれてるところだよね、秋吉さん」
「っ、はい」

 彼に念押しされて返事をすると、佐久間さんはいい答えを待っていると言ってくれた。


「あの……私なんかが社長室勤務になって、足手まといになりませんか? MDの仕事にもようやく慣れてきたところで、社会人経験も皆さんほどありませんし」

 陽太くんは私の仕事ぶりや企画した内容を見てくれたそうだけど、入社して一年も経たずに異動なんてあまり聞いたことがない。


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