君を愛していいのは俺だけ
夜景のネオンが、冷え切った空気で一層煌めいて見える。
腕時計を見れば、二十三時前。遠方に住んでいるらしい社員が帰宅するからと、陽太くんに挨拶に来た。
「もうそんな時間か。タクシーで帰る?」
「いえ、まだ終電があるので大丈夫です」
「そう。じゃあ気を付けて帰ってね。今日はありがとう」
身支度を整えてリビングを出て行く男性社員を見送るために、彼がソファから立ち上がった。
「周防社長、いい人でしょう?」
「はい。そうですね」
彼が席を外した隙に、佐久間さんが話しかけてきた。
「どの社員のこともちゃんと覚えているし、気にかけてくれるんです。体調が悪い社員がいれば、安心して休めるようにするし、嬉しいことがあれば自分のことのように喜んでくれるし……あんな社長、なかなかいるものではないと思います」
「私もそう思います」