君を愛していいのは俺だけ

 街に繰り出して夜遊びに行く人や、始発まで同僚の家に身を寄せると言って帰っていく人が出てきて、再び見送りから陽太くんが戻ってくると、佐久間さんや他の社長室の人も身支度を始めた。


「佐久間たちはタクシーでしょ?」
「そうですね。方向が違うので四台お願いします」

 ソファに座っている私がシャンパングラスに手を伸ばそうとしたら、陽太くんが隣に座った。
 彼は携帯でコンシェルジュに連絡を入れてから、佐久間さんたちの身支度を眺めている。


「秋吉さんはちょっと待ってね」
「はい」

 私の自宅が、ここからは一番近い。少しでも遠くに住む社員に先を譲ることに異論はなかった。
 

 十分も経たないうちに、コンシェルジュから連絡が入り、佐久間さんたちが帰っていった。


「見送ってくるから待ってて」
「はい」

 陽太くんも一緒に出て行ってしまい、私はひとり残されてしまった。


 リビングは宴の名残で散らかっている。
 私は、テーブルの上のグラスをシンクに下げ、少しでも片付けをすることにした。


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